大気圏再突入で燃え上がる小惑星探査機「はやぶさ」

宇宙
02 /16 2021
炎上、小惑星探査機はやぶさ


火炎の中心で小惑星探査機はやぶさを燃やしたけもの


※どちらも動画自体は同じです
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ファルコンヘビーと世界の大重量打ち上げロケット(HLV)

宇宙
02 /11 2018
先日のファルコンヘビー、すごかったですよね!
ファルコン9の大型発展型として、コアステージを3本束ねた大型ロケット!
一段目1機あたりのエンジン数が9基なので、合計27基!とんでもない…


▲ファルコンヘビー打ち上げの様子

いやもうロケットとそのエンジンもさることながらですね、
ペイロードですよ、ペイロード。
ペイロードっていうのは要するに荷物なわけです。
ロケットの荷物といえば人工衛星とかまあそういうもんなわけですけど、
ファルコンへビーは試験機だからって何故か電気自動車を積んできました!!!
テスラのロードスターというお車。なんということでしょう。

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やばい。「ちょっと火星言ってくるワ」ってノリのこちらのポーズ
うーんすばらしい
車はそこまで興味なかったんですがロードスターの模型とかちょっと欲しくなってしまった…
ちょっとアマゾン屋さんあたりでポチってしまう可能性がございますね。

地球をバックに宇宙を飛ぶ真っ赤な電気自動車のとんでもないインパクトは一生忘れられなさそうです。

それにしても打ち上げたのが普通の地球周回軌道ではなくまさかの火星遷移軌道とかいうもうほんとすごい。
でも投入された軌道について調べてみたらまさかの火星軌道ぶち抜いてその先のベスタとか、なんかそこら辺まで行ってしまう軌道…電気自動車という重いペイロードを、ロケットの二段目と共に、スィングバイもナシでこの軌道に投入するとか言う…

惑星間軌道に何かを投入しようとすると、効率の面で三段目のロケットを積んだり、打ち上げてから地球やその他の惑星の重力を利用して加速するスイングバイ航法を使ったりするわけですけれども、ファルコンヘビーの場合は二段構成なのにも関わらず、猛烈な打ち上げ能力で火星よりちょっと先の遠日点を持つ軌道に投入しちゃったわけです。やばい。

今後、ロケットに三段目を搭載したりしたら、外惑星探査機なんかの打ち上げも夢ではないかもしれません。天王星や海王星のオービターや、ボイジャーのように太陽系外へ飛んでいく探査機もイケそうです。

そして打ち上げ能力もさることながら、あの「帰ってくるブースター」もとんでもないです。ロケットから切り離されたブースターが2機同時に着陸するとかいうとんでもないものを見てしまって凄すぎて笑ってしまいました…

まるで逆再生してるかのようにロケットを逆噴射しながら戻ってくる様子はもうなんか本当にSF映画か何かのようです。これまで「再利用できるロケット」といえばスペースシャトルのような有翼の往還機のイメージがとても強く、いわゆる普通のロケットというのは「使い捨てるロケット」というのが半ば当たり前のような感じでしたが、ファルコン9やファルコンヘビーは、そのロケットを再利用しようというわけで、いやもう凄い話です。しかも衛星を保護するカバーであるフェアリングの回収も将来的には検討するとかで、有翼機とはまた異なるロケット再利用の時代が来そうです。


★いろんなヘヴィリフトビークルなロケット
ファルコンヘビーのような大重量のペイロードを打ち上げ可能なロケットをちょこっとご紹介してみちゃったりする系のアレです。
低軌道に20トン以上、かつてのスペースシャトルに匹敵する打ち上げ能力を持つロケットをヘヴィ・リフト・ヴィークル、「HLV」と呼んだりするそうです。



・アンガラA5


▲アンガラA5の打ち上げ

ロシアのロケットです。2014年に打ち上げに成功しました。アンガラはロコットやゼニットといったICBMを転用したロケットの置き換えなどを実現しつつ、大重量ペイロードの打ち上げまで目指した汎用性の高いロケットのシリーズです。
アンガラは一段目のコアモジュールを「URM(ユニバーサルロケットモジュール)-1」と呼んでおり、アンガラA5では中心のURM-1を取り囲むように、さらにURM-1をブースターとして4基搭載しています。搭載しているエンジンはケロシンと液体酸素を推進剤とするRD-191を搭載しています。ちなみにこのRD-191はロシア版スペースシャトルと言われる宇宙往還機「ブラン」の打ち上げにも使われたロケット「エネルギア」のエンジンRD-170の派生型でもあります。RD-170は燃焼室が4つありましたが、RD-191ではこれを1つにしています。



・デルタIVヘビー


▲デルタIVヘビーの打ち上げ

アメリカのデルタIVシリーズの大重量打ち上げ機バージョンで、一段目のコモン・ブースター・コアを3本束ねたロケットです。搭載されたRS-68エンジンは液体酸素と液体水素を推進剤とした世界最強クラスのロケットエンジンです。打ち上げ時はゆっくりと打ち上がっていき、一段目が自らの噴射炎で黒くなっちゃったりするロケットです。2012年まではRS-68エンジンが使われていましたが、それ以降は改良型のRS-68Aエンジンを使用しています。
主に軍事衛星の打ち上げなどのほか、2014年にはオリオン宇宙船の無人試験機であるEFT-1の打ち上げにも成功しました。



・スペースシャトルとSD-HLLV

少し時代は戻りまして…数年前に引退したスペースシャトルは大きな打ち上げ能力を持ちつつ、往還機として再利用できるロケットのイメージの最たるものですが、あえて使い捨てバージョンとして発展させたコンセプトが「SDV(Shuttle-Derived Launch Vehicle)」です。

1970年頃からあった「マグナム」は低軌道に80トンの打ち上げ能力があり、人間を火星に送り込むことも検討されていました。その他試験機が打ち上げられるに留まった「アレス」も一段目やブースターにスペースシャトルの固体補助ロケット(SRB)を発展させたもの搭載するなどしていました。

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▲マグナム(Credit:NASA)

スペースシャトルをそのまんま使い捨てにしたようなものとしては「シャトルC」があり、こちらは寿命が最後の1回となったスペースシャトルのメインエンジン「SSME」を搭載して打ち上げようというものでした。スペースシャトルは有人機であるため、その有人区画や大気圏再突入用の翼など、ペイロードの打ち上げ時には「重り」になってしまうものが一切無いため、打ち上げ能力が高いというのが特徴です。

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▲シャトルC(Credit:NASA)

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▲SD-HLLV(Credit:NASA)

「シャトルC」はポシャってしまいましたが、その後2000年代に再び似たようなコンセプトとして「Shuttle-Derived Heavy Lift Launch Vehicles(SD-HLLV)」があります。シャトルCとごっちゃにしちゃってたのですが、よく見ると形状が結構異なります。SD-HLLVの方がちょっと太めになっているのと、有人ペイロードにも対応しているのが特徴です。



こうしてみると国や時代によって色んなロケットが検討されたりしててとても面白いです。
お気に入りな推しロケットを探してみてくださいね!!!

…世界のとか書いておきながらほぼアメリカやん紹介してるやつ

超低高度を飛ぶ人工衛星「つばめ」とその魅力!

宇宙
10 /03 2017
宇宙空間と言えば、定義としては地上から高度100キロ以上の空間を指しますが、地球の周りを回っている人工衛星は低いものでもだいたい400~600キロ程度です。地球を観測する「だいち」シリーズもだいたい高度600キロくらいを飛んでおります( ˙︶˙ )

そんな中、JAXAの人工衛星「つばめ」は、高度200km程で飛ばしちゃおうぜ!という野心的な技術を実証する衛星です。

▲超低高度衛星技術試験機SLATS「つばめ」(Credit:JAXA)

人工衛星から地球を観測する時は、地球に近い程、詳細な写真やデータが取れます
しかし低い高度というのは大気が濃くて抵抗が強く、すぐ落ちてしまいます。そのため、殆どの衛星はもっと高い高度に居るのです。

高度200キロで大気の抵抗に負けずに飛び続けるためにはどうすればよいか?というワケで、「つばめ」はイオンエンジンを四六時中吹かしながら飛び続けるのです。

電力によって推進剤を噴射することで推進するイオンエンジンは、普通のロケットエンジンと比較してパワーは小さいものの、非常に燃費が良いという特徴があります。そのため長時間の運転に向いています。これによって「つばめ」は高度を維持し続けることができるというわけです。

また高度200キロくらいの大気の厄介なとこは、大気の抵抗そのものだけではなく、高い高度で酸素分子が紫外線で分解した反応性の高い「原子状酸素」とか言うヤツが人工衛星の材料を劣化させる問題もあります( 'ω' ;)💦身の回りにある酸素は、酸素原子が2つくっついた分子の状態で存在していますが、200kmくらいの高度では酸素原子が単体に分離した状態で存在してしまうわけです。これは反応性が高く、人工衛星を構成するいろいろな材料を劣化させてしまう原因になってしまうのです。この原子状酸素がどれくらい人工衛星によって影響があるかを「つばめ」は調べたりもするのです★

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▲原子状酸素によってボロボロになってしまった衛星を保護している「ポリイミド」(Credit:JAXA)

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▲「つばめ」の搭載機器(Credit:JAXA)

http://www.satnavi.jaxa.jp/supports/project/slats_sasaki.htmlより引用

「つばめ」衛星に搭載された材料劣化モニタ「MDM」は、搭載されたカメラ「MDM-C」によって、複数のサンプルを収めた「MDM-S」を週に一回程度の撮影を行い、その変化を観察することで原子状酸素の影響の調査が行われます(๑˙ϖ˙๑ )✨

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▲「つばめ」の材料劣化モニタ「MDM」の搭載位置(Credit:JAXA)

http://www.satnavi.jaxa.jp/project/slats/news/2016/pdf/ws1-2.pdfより引用

また、これまでの超低高度を飛ぶ人工衛星としては、ヨーロッパの重力場観測衛星「GOCE(ゴーチェ)」がありました。それにしても見てくださいよ、この超絶カッコいい見た目!

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▲ヨーロッパ宇宙機関の重力場観測衛星「GOCE」(Credit:ESA)

「ゴーチェ」は地球の重力のムラを精密に観測するため、超高精度の加速度センサーを搭載し、さらに低い高度を飛ぶという人工衛星です。この衛星にもクインテック社製のイオンエンジンが搭載されており、これによって高度を維持していましたが、推進剤のキセノンの枯渇によって運用は終了、大気圏へと再突入しました。しかし当初の予定を大幅に超えた運用が行われるなど、イオンエンジンの燃費の良さが伺えます。

こうした人工衛星は空気抵抗の影響も考慮してか、空力的に安定しやすい形状となっており、人工衛星と飛行機の間の子のような雰囲気になっているのが面白いですね。

北朝鮮の非対称ジメチルヒドラジン製造能力について

宇宙
10 /01 2017
最近、北朝鮮による弾道ミサイルの発射が話題になっております。
ミサイルと言えばロケットエンジンを搭載し、それによって飛行するわけですから、当然燃料とそれを燃やすための酸化剤が必要となります。
北朝鮮の弾道ミサイルの多くには燃料として、「非対称ジメチルヒドラジン(UDMH)」が使用されているとされています。この非対称ジメチルヒドラジンの製造が北朝鮮の国内だけで可能なのかどうかが話題となっています。
ロケット、またはミサイルの燃料には色々なものがありますが、その中でもヒドラジンは「常温で液体のまま保存が可能」であることと、「酸化剤と混合するだけで自然に発火・点火が可能(ハイパーゴリック)」という特徴があります。
そのため撃たなきゃいけないときにすぐ撃てなければならない、という性質を持つ弾道ミサイルには適した特性の燃料であるため、各国で広く使われているミサイル燃料でもあります。一方で毒性が強く、取り扱いが難しいため、製造には高い水準の技術が必要であると言われています。
北朝鮮では咸興(Hamhung)と興南(Hungnam)と呼ばれる地域での化学工業が盛んであり、UDMHもここで製造が可能ではないかと考えられています。
また、北朝鮮の科学刊行物には2013年から2016年にかけてUDMH製造に関する内容の論文が発表されていることが確認できます。

  • UDMHの酸化過程

  • UDMHと水の酸化反応

  • UDMH水溶液の電気伝導度の測定に関する研究


といった論文が発表されているようです。
前者2つはUDMHの製造過程で発生する廃液の処理に関するものであるため、背後には実際にUDMHの製造が行われていた可能性が高いとされています。
最後の1つは、ヒドラジンの水溶液に含まれる水の量によって変化する伝導率を測定することで、UDMHの品質を測定できるという技術です。
また、興南(ハンナム)の合成繊維「ビナルロン」の製造施設とされた工場は、1969年ごろのアメリカCIAによる偵察衛星画像の調査によって、塩素とアンモニアを行っている工場である可能性が高いとされました。
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▲UDMHの製造を行っているのではないかと言われているビナルロン工場の衛星画像
塩素とアンモニアは「オリンラシヒ法」と呼ばれるヒドラジンの製造工程において必要とされるため、UDMHの製造も、近年のこの工場の改修によって比較的容易に行えると考えられたそうです。
北朝鮮はこれまでUDMHを国外から輸入していたとされていますが、自国内での製造が可能になったことから、北朝鮮の禁輸措置などを行ったとしても、ミサイル開発が継続できるのではないかと言われています。
北朝鮮の学術誌で公表されたUDMH製造関連の論文

  • Kim Ryong Soh, Hong Jeong Hyun, “The Oxidation Process of 1,1-dimethylhydrazine,” Chemistry and Chemical Engineering, 2013, 2013, no.2, pp.38-40

  • Kim Ryong Soh, Hong Jeong Hyun, “1,1-dimethylhydrazine-H2O Oxidation,” Chemistry and Chemical Engineering, 2015, no.1, pp.41-42

  • Cha Seok Bong, Kim Yeong No, “A Study on Measuring the Electroconductivity of Unsymmetrical Methyl Hydrazine-water solution,” Chemistry and Chemical Engineering, 2016, no.3, pp.41-42.



参考:DOMESTIC UDMH PRODUCTION IN THE DPRK
http://www.armscontrolwonk.com/archive/1204170/domestic-udmh-production-in-the-dprk/

カナダの原子力発電所で、宇宙探査用のプルトニウム238を生産へ

宇宙
05 /19 2017

United States to ship neptunium to Canada as part of Pu-238 production
http://fissilematerials.org/blog/2017/03/united_states_to_ship_nep.html



米エネルギー省(DoE)は、宇宙探査機用の原子力電池に使われるプルトニウム238生産のため、材料となるネプツニウム237をカナダへ輸出する事になったようです。プルトニウム238は、ネプツニウム237に中性子を吸収させることで生成することができますが、この中性子照射を行うための原子炉として、CANDU型の重水炉を運転してるダーリントン原子力発電所が利用されるようです。( *˙ω˙*)و

宇宙探査機の原子力電池用のプルトニウム238は、昔生産してた原子炉が廃炉になった関係で在庫が激減するという問題に直面していました。というのも、プルトニウム238の生産に利用されていた原子炉は、主に核兵器用のプルトニウム239の同位体比の高い兵器級プルトニウム(WG-Pu)や、核融合燃料として使用されるトリチウムの生産を行っていた軍事用原子炉だったのです。そのため冷戦終結に伴って原子炉が廃炉される事となり、結果としてプルトニウム238の供給不足に陥ってしまったのです。原子力電池を搭載して2011年に打ち上げられた火星探査車「キュリオシティ」も、使用したプルトニウム238の半分をロシアから購入するなどしています。

プルトニウム238が供給不足になると、NASAの深宇宙探査計画などに影響が出るため、最近はプルトニウム238の再生産に関する研究が行われ、少量ながら生産が行われるようになってきました。これまで比較的小型の研究用原子炉のみでの生産だったのが、商用の原子力発電所でも行われるようになるというのは大変興味深いです。

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▲プルトニウム238の製造工程(Credit:DOE)

プルトニウム238を作るには、材料のネプツニウム237に熱中性子をたくさん吸収させられる原子炉が適していますので、中性子を大量に発生させやすい設計の研究用原子炉が使われていました。カナダなどで多く利用されているCANDU炉などの重水炉は、原子力発電所として一般的な軽水炉よりも炉心での冷却材による中性子の吸収が少ないため、多くの中性子を発生させやすいという特徴があります。そのため研究用原子炉とまでは行かずとも、現行の原子力発電所でもプルトニウム238を生産できるようになるのだと思います。原子力発電所の原子炉は大型であるため、多くのプルトニウム238を生産できる可能性もあります。

原子力発電所での同位体生産はアメリカだとPWRでの核兵器維持用のトリチウム生産が知られてましたが、カナダのCANDUでもプルトニウム238生産が実現されることになりそうです。

今井智大原子力

いまいともひろです。

偉大なる88年生まれ
偉大なる三重県出身 偉大なる東京都在住
今井智大公式サイト
原子力・科学技術愛好センター
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