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熱電子放射体「六ホウ化ランタン(LaB6)」の特徴と応用

その他
09 /08 2016
熱電子、とはあまり聞き慣れない言葉かもしれません。しかし実は割と身近なものでもあります。というのも天上にある蛍光灯がまさに熱電子を利用している装置なのです。

蛍光灯のフィラメントにはタングステンなどの材料が使用されています。タングステンは小さいエネルギーで熱電子を外部に放出しやすいという特徴があります。蛍光灯ではタングステンから放出された熱電子がガラス管内部の水銀原子に衝突し、励起された(エネルギーを得た)水銀原子からは紫外線が放出されます。この紫外線が蛍光体によって可視光線に変換され、私たちの部屋を照らしてくれているわけです。

そしてタングステンのように小さいエネルギーで電子を放出しやすい(「仕事関数」が小さい)材料として「六ホウ化ランタン」と呼ばれるものがあります。「ランタン・ヘキサボライド」、「LaB6(ラブシックス)」とも表記されます。

LaB6HotCathode.jpg 

このキレイな赤紫色の物質がLaB6です。

タングステンよりも熱電子を放出しやすいというだけでなく、極めて硬く、融点も非常に高いという優れた性質を持っています。長い寿命を実現しやすいことから、様々な分野で利用されています。



熱電子放射体としてのLaB6の用途は、「電子顕微鏡」、「熱電子発電」、「宇宙機の電気推進システムや、粒子加速器用のイオン源」など様々な用途が存在しています。

・電子顕微鏡

タングステンよりも熱電子を放出しやすいので、電子を観察に利用する電子顕微鏡においてはその空間分解能(どれだけ細かく見れるか)を向上させることができます。電子顕微鏡において電子を発生させる電子銃と呼ばれる機器に用いられます。


・熱電子発電

あまり聞き慣れない方式の発電システムですが、宇宙用原子炉などにおいて、原子炉の熱エネルギーを電気エネルギーに変換する技術です。熱電子放射体であるエミッター(陽極側)を原子炉熱で加熱し、そこから放出される電子をコレクター(陰極側)で受け取る事で電力を発生させるというものです。より効率よく熱を電気に変換できるよう、熱電子を放出しやすいLaB6の使用が検討されています。


・イオン源

宇宙探査機に搭載されるエンジンには、長距離を航行するため燃費の良いエンジンが求められます。その一つが小惑星探査機「はやぶさ」にも搭載されたイオンエンジンなどの電気推進システムです。これはキセノンなどのガスをイオン源で電離させプラズマを作り、高電圧の電場で加速させて放出させることで宇宙探査機を飛ばすというものです。

プラズマを作るためにはタングステンやLaB6を使った電極から電子を放出させ、推進剤ガスにぶつけて生成する「直流放電式」という方法と、マイクロ波で電子を加速して推進剤ガスにぶつける「マイクロ波放電式」の2種類があります。

「はやぶさ」に搭載されたイオンエンジン「μ10」は「マイクロ波放電式」ですが、アメリカNASAの「ディープスペース1」などは「直流放電式」が利用されています。直流放電式を用いたイオンエンジンにおいても、性能も高く、寿命も長いLaB6が重宝されます。

ちなみにマイクロ波放電式は直流放電式と比較して電極が無いので「電極をゆっくり予備加熱をする必要がない」「電極の損耗による寿命がない」などの特徴があります。

イオンエンジンだけでなく、ホールスラスタやMPDといった別の電気推進システムでも用いられる、放電用のホローカソードと呼ばれる部品にもLaB6の使用は検討されています。

こうしたイオン源は宇宙探査機だけではなく、地上の大型の粒子加速器にも使用されていたりします。


LaB6は普段聞き慣れない物質ではありますが、こうして様々な特殊な用途で活躍しているのです!
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ともにゃん

宇宙開発や原子力が大好きな魔法少女(文系成人男子)です。同人サークル「東方旅客鉄道」「隙間科学研究所」の中の人。絵描いたり同人誌書いたり。たまに女装コスプレイヤー。 人工衛星・宇宙探査機/原子炉・原子力電池/核兵器・軍事(現代兵器)/ゴスロリ女装/自作PC/まどマギ/東方/無線/バイク/鉄道/創作など。日本原子力学会員

88年生まれ
三重県出身 東京都在住

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