カナダの原子力発電所で、宇宙探査用のプルトニウム238を生産へ

宇宙
05 /19 2017

United States to ship neptunium to Canada as part of Pu-238 production
http://fissilematerials.org/blog/2017/03/united_states_to_ship_nep.html



米エネルギー省(DoE)は、宇宙探査機用の原子力電池に使われるプルトニウム238生産のため、材料となるネプツニウム237をカナダへ輸出する事になったようです。プルトニウム238は、ネプツニウム237に中性子を吸収させることで生成することができますが、この中性子照射を行うための原子炉として、CANDU型の重水炉を運転してるダーリントン原子力発電所が利用されるようです。( *˙ω˙*)و

宇宙探査機の原子力電池用のプルトニウム238は、昔生産してた原子炉が廃炉になった関係で在庫が激減するという問題に直面していました。というのも、プルトニウム238の生産に利用されていた原子炉は、主に核兵器用のプルトニウム239の同位体比の高い兵器級プルトニウム(WG-Pu)や、核融合燃料として使用されるトリチウムの生産を行っていた軍事用原子炉だったのです。そのため冷戦終結に伴って原子炉が廃炉される事となり、結果としてプルトニウム238の供給不足に陥ってしまったのです。原子力電池を搭載して2011年に打ち上げられた火星探査車「キュリオシティ」も、使用したプルトニウム238の半分をロシアから購入するなどしています。

プルトニウム238が供給不足になると、NASAの深宇宙探査計画などに影響が出るため、最近はプルトニウム238の再生産に関する研究が行われ、少量ながら生産が行われるようになってきました。これまで比較的小型の研究用原子炉のみでの生産だったのが、商用の原子力発電所でも行われるようになるというのは大変興味深いです。

Pu238Process.png
▲プルトニウム238の製造工程(Credit:DOE)

プルトニウム238を作るには、材料のネプツニウム237に熱中性子をたくさん吸収させられる原子炉が適していますので、中性子を大量に発生させやすい設計の研究用原子炉が使われていました。カナダなどで多く利用されているCANDU炉などの重水炉は、原子力発電所として一般的な軽水炉よりも炉心での冷却材による中性子の吸収が少ないため、多くの中性子を発生させやすいという特徴があります。そのため研究用原子炉とまでは行かずとも、現行の原子力発電所でもプルトニウム238を生産できるようになるのだと思います。原子力発電所の原子炉は大型であるため、多くのプルトニウム238を生産できる可能性もあります。

原子力発電所での同位体生産はアメリカだとPWRでの核兵器維持用のトリチウム生産が知られてましたが、カナダのCANDUでもプルトニウム238生産が実現されることになりそうです。
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今井智大原子力

いまいともひろです。

偉大なる88年生まれ
偉大なる三重県出身 偉大なる東京都在住
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