超低高度を飛ぶ人工衛星「つばめ」とその魅力!

宇宙
10 /03 2017
宇宙空間と言えば、定義としては地上から高度100キロ以上の空間を指しますが、地球の周りを回っている人工衛星は低いものでもだいたい400~600キロ程度です。地球を観測する「だいち」シリーズもだいたい高度600キロくらいを飛んでおります( ˙︶˙ )

そんな中、JAXAの人工衛星「つばめ」は、高度200km程で飛ばしちゃおうぜ!という野心的な技術を実証する衛星です。

▲超低高度衛星技術試験機SLATS「つばめ」(Credit:JAXA)

人工衛星から地球を観測する時は、地球に近い程、詳細な写真やデータが取れます
しかし低い高度というのは大気が濃くて抵抗が強く、すぐ落ちてしまいます。そのため、殆どの衛星はもっと高い高度に居るのです。

高度200キロで大気の抵抗に負けずに飛び続けるためにはどうすればよいか?というワケで、「つばめ」はイオンエンジンを四六時中吹かしながら飛び続けるのです。

電力によって推進剤を噴射することで推進するイオンエンジンは、普通のロケットエンジンと比較してパワーは小さいものの、非常に燃費が良いという特徴があります。そのため長時間の運転に向いています。これによって「つばめ」は高度を維持し続けることができるというわけです。

また高度200キロくらいの大気の厄介なとこは、大気の抵抗そのものだけではなく、高い高度で酸素分子が紫外線で分解した反応性の高い「原子状酸素」とか言うヤツが人工衛星の材料を劣化させる問題もあります( 'ω' ;)💦身の回りにある酸素は、酸素原子が2つくっついた分子の状態で存在していますが、200kmくらいの高度では酸素原子が単体に分離した状態で存在してしまうわけです。これは反応性が高く、人工衛星を構成するいろいろな材料を劣化させてしまう原因になってしまうのです。この原子状酸素がどれくらい人工衛星によって影響があるかを「つばめ」は調べたりもするのです★

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▲原子状酸素によってボロボロになってしまった衛星を保護している「ポリイミド」(Credit:JAXA)

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▲「つばめ」の搭載機器(Credit:JAXA)

http://www.satnavi.jaxa.jp/supports/project/slats_sasaki.htmlより引用

「つばめ」衛星に搭載された材料劣化モニタ「MDM」は、搭載されたカメラ「MDM-C」によって、複数のサンプルを収めた「MDM-S」を週に一回程度の撮影を行い、その変化を観察することで原子状酸素の影響の調査が行われます(๑˙ϖ˙๑ )✨

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▲「つばめ」の材料劣化モニタ「MDM」の搭載位置(Credit:JAXA)

http://www.satnavi.jaxa.jp/project/slats/news/2016/pdf/ws1-2.pdfより引用

また、これまでの超低高度を飛ぶ人工衛星としては、ヨーロッパの重力場観測衛星「GOCE(ゴーチェ)」がありました。それにしても見てくださいよ、この超絶カッコいい見た目!

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▲ヨーロッパ宇宙機関の重力場観測衛星「GOCE」(Credit:ESA)

「ゴーチェ」は地球の重力のムラを精密に観測するため、超高精度の加速度センサーを搭載し、さらに低い高度を飛ぶという人工衛星です。この衛星にもクインテック社製のイオンエンジンが搭載されており、これによって高度を維持していましたが、推進剤のキセノンの枯渇によって運用は終了、大気圏へと再突入しました。しかし当初の予定を大幅に超えた運用が行われるなど、イオンエンジンの燃費の良さが伺えます。

こうした人工衛星は空気抵抗の影響も考慮してか、空力的に安定しやすい形状となっており、人工衛星と飛行機の間の子のような雰囲気になっているのが面白いですね。
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今井智大原子力

いまいともひろです。

偉大なる88年生まれ
偉大なる三重県出身 偉大なる東京都在住
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