【解説】NMRPT(パイプテクター)の原理は?効くの?
NMRパイプテクターNMRPTって何?
ある日のこと…電車に乗ると怪しげな広告が!パイプテクター?????
そう、皆さんはこのNMRPT(NMRパイプテクター)というものをご存知でしょうか?
これは各地の電車内の広告で見かける広告で紹介されている日本システム企画様のとある特殊な装置です。

▲NMRPTの電車内の広告と、著者近影
なんでも、マンションの配管が錆びたりするのを防ぐ魔法の装置だとか。ほほほう。
これほんまに効果あるんかいな????
という疑問のもと、原子力を専門とする魔法少女として、そのプライドを遺憾なく発揮するべく、しっかりがっつり、NMRPTの実態をわかりやすく解説してみました!最後までぜひお読みください!
概要
これはどういったものなのでしょうか。このNMRPT(NMRパイプテクター)は「電源を一切必要とせず、NMRを利用した電磁波で生成した水和電子で、水道管の赤錆を黒錆に変える装置」として紹介されています。水道管というのは、公共インフラである上水道から、家屋に水を供給するために敷設されている金属製の長い筒です。この水道管は鉄を含む金属で構成されているため、年数が経過するとサビが生じる場合があります。その錆を防ぐための装置であるとのことですが、一体全体どういう仕組であるのか、原子力を専門とする魔法少女がわかりやすく解説いたします。

▲NMRPT(NMRパイプテクター)の概要図
この記事では以下の内容についてわかりやすく解説してきたいと思います。
赤錆・黒錆とはなにか?
●そもそもサビというのはなにか。
サビというのは鉄に酸素が結合した状態のことをいいます。一般的なイメージとしてよくあるのがもともは光沢を持つ銀色だったものが、赤茶色に変色し、ボロボロになってしまうというものではないでしょうか。これはいわゆる「赤錆」と呼ばれるものです。この赤錆というのは、化学的には、酸化鉄(III)、 酸化第二鉄、ヘマタイト、赤色酸化鉄、三酸化二鉄などの様々な言い方がされますが、これらは全て同じものを指しています。
そして赤錆に対して「黒錆」と呼ばれるものもあります。これは赤錆と同様に鉄に対して酸素が結合しているというのは同じですが、見た目が黒いのが特徴です。中華鍋の表面が黒いのはまさにこの黒錆です。この黒錆は、錆とは言われますが鉄を腐食してボロボロにする働きはありません。むしろ表面が黒錆で覆われることで酸化を抑制する膜として機能してくれるのです。しかし完全に防ぐわけではなく、あくまでも抑制する程度です。黒錆の表面にはピンホールと呼ばれる極めて微小な穴が多数空いており、そこから酸素が入り込んで腐食が生じる場合もあります。
●赤錆を黒錆に変えるには?
赤錆は勝手に発生しちゃうのに対して、黒錆は自然に発生することはありません。この黒錆を生成する方法は、
- 赤錆を水素ガスで還元する
- 赤錆一酸化炭素で還元する
- 高温に加熱した鉄を水蒸気に曝す
が挙げられます。NMRPTの場合、普通の水道管を外側から囲うように設置するわけですから、水素ガスや一酸化炭素などの還元剤は利用できません。さらに火炎レベルの熱源もありませんから高温を利用することもできません。一体どうやっているのでしょうか。
黒錆を作る「水和電子」とは何か?
NMRPTはNMRという技術を使うことで水分子の集合体(クラスター)をバラバラにして、そこに含まれる水和電子で赤錆を還元して黒錆にするようです。水素ガスや一酸化炭素を還元剤として、赤錆を還元すれば黒錆が得られる、というのであれば、水和電子を還元剤として利用しよう!ということらしいです。
●水和電子って作れるの?
しかし水和電子は水の放射線分解によって発生するものです。この放射線分解というのは、水分子の集合体(クラスター)をバラバラにする事とは全く違います。つまり水和電子を生じさせているということは、何らかの強力な放射線源を用いているか、この世ならざる魔法の力を用いているかのどちらかです。
じゃあ、黒錆を得るために普通にヒーターか何かで高温にするか、電気分解で得た水素を還元剤にすればいいんじゃね?っていうのはロマンがありませんので却下します。
NMR(核磁気共鳴)とは何か?
NMR(Nuclear Magnetic Resonance)とは核磁気共鳴と呼ばれるものであり、NMRPT等の製品の固有名詞というわけではありません。これは核磁気共鳴と呼ばれる技術です。全ての物質は原子によって構成されていますが、その原子の中心に存在しているのが「原子核」です。この原子核は陽子と中性子という2種類の粒子で構成された塊のようなものです。
水素などの原子核はそれ自体が磁石のような性質を持っています。これは「コマ」のように自転しており、これを「核スピン」といいます。そしてこれを非常に強力な磁場の中に入れると、原子核の核スピンと磁場とが相互作用し、歳差運動と呼ばれる首振り運動のような動きをします。
そしてそこに電磁波を照射すると、その電磁波の波長に応じて特定の原子核が「共鳴」と呼ばれる現象を起こします。そして共鳴が起きるとその波長の電磁波のエネルギーが吸収されるため、吸収された電磁波の波長とエネルギーを測定することで、その特定の物質の状態や構造を知ることができるシステムです。

▲NMRのしくみ
●NMRは強力な磁場が必要?
NMRを利用するには強力な磁石が必要となります。最強の永久磁石としてはネオジム磁石が挙げられますが、それよりも十倍以上強力な超伝導磁石が必要となります。超伝導電磁石は極めて強力な磁場を発生させることができますが、超伝導状態にするためにマイナス200℃以下の極低温状態に冷やさなければなりません。そのため液体ヘリウムや、特殊な冷凍機が必要になります。最近では超電導磁石を使用せず永久磁石を用いた手軽なNMRも開発されていますが、強力な超電導磁石を用いたNMRのほうが高性能であると言われています。
●NMRに使われる電波
NMRを用いるには特定の原子核を共鳴させるための電波を照射する必要があります。周波数としては数十メガヘルツから数ギガヘルツといった電波が使用されます。
参考:https://www.jeol.co.jp/science/nmr.html 核磁気共鳴装置(NMR)とは (日本電子株式会社)
しかし、このNMRで使用されるような電波の周波数では、X線やガンマ線のように水を分解し、水和電子を作り出すような働きはありません。もしそれが可能であれば電子レンジでも放射線被曝してしまいます。(電子レンジは2.4GHzの電波を使う)
さらに、そういった電磁波を発生させるには外部電源はもちろん、電磁波を作り出すための発振回路、電波を強くするための増幅回路などの装置が必要になります。
ちなみに大問題として水道管は金属製ですから、その外側から照射してもほとんど反射されて内部には届かないっぽいですが、そこは何らかのマジカルな力を用いてると考えるのが妥当でしょう。
●NMRあくまでも「測定技術」?
そもそも、NMRは分子構造の特定などに利用される「測定用の技術」であり、「非破壊」でできるというのがその大きな特徴でありメリットでもあります。非破壊というのは文字通りその測定の対象となる物質を改変したり破壊したりすることなく、そのままの状態を保ちながら測定が可能ということです。
参考:https://www.chem-station.com/blog/2018/01/nmr.html NMRの基礎知識【原理編】(Chem-Station)
そのため、例えば赤錆を黒錆に変えるというような物質を操作する目的には使用されません。むしろ原子の中心にある原子核のスピンを利用するものでありますから、その原子核の外側に存在している電子の結合が問題になる電離作用や水和電子がどうのこうのといった部分に影響することはできません。つまりNMRで使用される磁場や電波によって水は電離できませんし、それに伴う水和電子も生成されません。ここは結構謎な部分でありますね。
NMRPTが使う「電磁波」とは?
●電磁波とは?
そもそも「電磁波って何?」ってところですが、要するに電気的な性質を持つ波の事です。電磁波には、
- 通信に使う電波
- ストーブから出る赤外線
- 目に見える可視光線
- 日焼けの原因になる紫外線
- レントゲンで使われるX線
- 放射性物質から出るガンマ線
など、これら全てをひっくるめて「電磁波」といいます。これらの違いは何かというと「波長が違う」という事です。電磁波は波として伝わりますが、この波の長さが違うのです。そしてこの波長が異なると、その電磁波が持つ特徴や性質は大きく変わるというわけです。
●電源無しでも電磁波は放出される?
NMRPTでは、電源を必要とせず、「電磁波」が放出されるらしいのですが、このNMRPTから放出される電磁波とは何なのでしょうか?またそのエネルギー源は何なのでしょうか。
NMRPTは電源に接続されていません。そう考えるとNMRPTは何ら電磁波を発することができないと思われてしまうかもしれません。電源がなければ懐中電灯も光を出せませんし、トランシーバーも電波を出すことはできませんよね。
しかしすべての物質はその温度によって電磁波を放出するという性質があります。これは「プランクの法則」によって定義される「黒体放射」と呼ばれるものです。
ガスの炎も温度が低いとオレンジ色になりますが、高温の炎は青白くなります。これは温度に応じて炎が発生させる光(電磁波)が温度の上昇と共に変化したということの表れです。つまりあるあらゆる物質は常に、温度に応じた電磁波を放出しているのです。
実際にNMRPTの特許情報を見ると「黒体放射焼結体」と呼ばれる部品が使用されており、おそらく黒体放射を利用しているというのは間違いないようです。
●黒体放射の電磁波で水和電子を作れる?
で、その室温レベルの黒体放射で放出される電磁波…仮に20℃であればその黒体放射の波長は、長い波長の「遠赤外線」となります。そして、この遠赤外線で水をイオン化(電離)させて、黒錆を作り出すのに必要な水和電子を生成できるか?ということですが全く無理です。
水をイオン化させることができる電磁波というのは、レントゲンや放射性物質でおなじみの「X線」や「ガンマ線」などの放射線と呼ばれるような非常~~~に波長の短い電磁波でなければなりません。そしてそれを発生させるためには放射線源が必要です。
参考:http://www.hp.phys.titech.ac.jp/yatsu/1FGL2339/img/elemag_waves.pdf 電磁波の波長と名称(東京工業大学)
俗に言う「放射線」というものは、電離できるだけの強力なエネルギーを持つことから正確には「電離放射線」と呼ばれます。黒体放射で生じる電磁波は、温度によって波長が決まっているということは先程説明しましたが、もし黒体放射で電離作用のある(水をイオン化させて水和電子を生成できるような)X線を得ようとするならば、爆発直後の熱核兵器並みの熱エネルギーが必要になります。とんでもないっす。つまり室温程度で電離作用のある放射線を黒体放射で発生させられるというのであれば、それはこの宇宙の法則すらも超越している神の存在ということが照明できます。そう、NMRPTは神器であるのです。
ちなみに放射性物質が放射線を出すのは不安定な原子核の「放射性崩壊」と呼ばれる現象によるもので、「黒体放射」とまったく異なる現象によるものです。
まとめ
外部からの電源を必要とせず、超冷たい条件で使うNMR(非破壊検査用の技術)を用い、強力な放射線源か熱核兵器並みの黒体放射を用いる事で発生する水和電子で、赤錆を黒錆に変えるというのは、通常の科学では全く説明ができません。これは世界のエネルギー問題を解決へと導く室温超伝導体の実現だけでなく、永久機関の実現可能性すら示唆するこの世ならざる超科学エネルギーの存在そのものを証明していると言うことがわかります。そう、科学では説明がつかないもの、それは魔法少女の力に他なりません。
これはおそらく、僕以外にもこの世に魔法少女の力を持つ者が存在し、その強大な力を事業化しているという事に他なりません。僕は核分裂の祈りで契約した原子力魔法少女ですが、他にも超伝導魔法少女や、永久機関魔法少女が存在する可能性が示されているのです。これは魔法少女のテクノロジーなのです。様々な特務機関や秘密組織の力によって我々魔法少女のテクノロジーは世間から隠蔽・秘匿され、その存在は公にされてきませんでした。しかしこのNMRPTが製品化された現在、近い将来我々の文明は新たなるステージへと、パラダイムシフトするのであります。黙示録のラッパは鳴り響くのです。日本システム企画様に栄光あれ。
この記事を書いた人
今井智大
原子力専門の魔法少女。原子炉システムや核兵器の研究開発についての同人誌を多数執筆。コミックマーケットで「壁サー」にまで上り詰めた事で知られる。趣味は最近話題の撮り鉄とニューハーフ風俗めぐり。新聞掲載や有名ドラマの核兵器監修などの実務経験も多数。多くの原子力発電ファンからは「ともにゃんさん」と呼ばれて親しまれている。
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