【宇宙】NASAの原子力電池向けプルトニウムの生産再開について

その他
03 /29 2013
または私は如何にして心配するのを止めて原子力電池を愛するようになったか



ちょっと前に話題になっておりましたが、NASAが深宇宙探査で用いる原子力電池用のプルトニウム238の再生産に目処がついたようですね。

アメリカでのプルトニウム238の生産は1960年代から、核兵器用のプルトニウム239やトリチウムの生産を行なっていた「サバンナリバー・サイト」のK炉と呼ばれる重水炉で生産されてきました。

具体的には使用済み核燃料から分離されたアクチノイド元素であるネプツニウム237を化学分離し、それを重水炉で原子炉照射を行っていました。

重水炉は中性子束密度が高く、中性子を吸収したネプツニウム237はネプツニウム238となり、短い時間でベータ崩壊を引き起こしてプルトニウム238が製造されます。核兵器用のプルトニウム239がウラン238に中性子を照射して生産される事から考えると工程としてはかなり異なっているのが特徴です。

しかしながらアメリカとロシアで交わされたプルトニウム生産炉協定によりサバンナリバーサイトの5基のプルトニウム生産用の原子炉は80年代から90年代にかけて廃炉となり、K炉も96年に閉鎖されてしまいました。

この事からプルトニウム238は在庫限りとなってしまい、冥王星探査機「ニューホライズンズ」や火星探査車「キュリオシティ」に搭載された原子力電池にはロシアからプルトニウム238も一部装荷されています。

NASAが太陽系外惑星などにおけるミッションが実施できなくなるとして大変危惧されてきましたが、ついに再生産の目処が立ったようです。

オークリッジ国立研究所(ORNL)が保有する高中性子束同位体原子炉(HFIR)を用いて二年間に渡って生産がなされるようです。

HFIRは世界でも最高レベルの中性子束密度を持つ原子炉であり、板状の高濃縮ウラン核燃料が螺旋状に配置されたインヴォリュート型燃料要素を持ちます。60年台から改良を続けながら使用されている研究用の原子炉であり、最近は冷中性子源のビームラインが取り付けられるなど物理学実験や同位体生産に活躍しています。

この原子炉を用いた生産は一昨年あたりから検討されており、昨年は照射試験などが行われていましたがついに生産へとこぎつけたようですね。年間1.5~2キログラムのプルトニウム238の生産を目指しているとの事です。

HFIRについては以前Twitter上でつぶやいていたものをTogetterにてまとめたものがこちらに。
http://togetter.com/li/462273
「高中性子束同位体原子炉「HFIR」のお話」

またこのORNLのHFIRだけではなく、アイダホ国立研究所(INL)の先進試験炉(ATR)においてもプルトニウム238の生産が行われるようです。

このプルトニウム238再生産の本格的な計画は6~7年に渡るようで。

次世代の宇宙探査のための原子力技術、その新しい一歩ですね。


参考記事:http://blogs.knoxnews.com/munger/2012/03/plutonium-project-at-ornl.html
$20M plutonium pilot project at ORNL
スポンサーサイト

コメント

非公開コメント

ともにゃん

宇宙開発や原子力が大好きな魔法少女(文系成人男子)です。同人サークル「東方旅客鉄道」「隙間科学研究所」の中の人。絵描いたり同人誌書いたり。たまに女装コスプレイヤー。 人工衛星・宇宙探査機/原子炉・原子力電池/核兵器・軍事(現代兵器)/ゴスロリ女装/自作PC/まどマギ/東方/無線/バイク/鉄道/創作など。日本原子力学会員

88年生まれ
三重県出身 東京都在住