小惑星探査機「はやぶさ2」搭載の小惑星着陸機「MASCOT」

その他
08 /20 2013
はやぶさ2にはMASCOT(マスコット)と呼ばれる小型の着陸機が搭載されます。

国産のMINERVA(ミネルヴァ)の高機能型、といった感じで、はやぶさ2本体から切り離される事で着陸します。

mascot-asteroid-lander-hayabusa2.jpg
(Credit:DLR)
DLRで開発中の様子です。大きさはMINERVAよりは大きいもののかなりコンパクトです。

MASCOTはMINERVA同様にホッピング移動により移動する事ができます。

Development of a Mobility Drive Unit for Low Gravity Planetary Body Exploration
(PDF)

How to build a 10 kg autonomous Asteroid landing package with 3 kg of instruments in 6 years?
(PDF)

システムは上記の資料が詳しいです。写真や制御のブロック図なんかもあって面白いです。

8000rpmのILM25というブラシレス直流ステッピングモータで重りをブンブン振り回す事で「飛び跳ねる」事ができます。

電源は搭載された一次リチウム電池から供給されます。



MASCOTに搭載されている科学観測機器をご紹介します。

搭載されている科学観測機器のは磁力計「MasMAG」地表面放射計「MUPUS-TM」光学カメラ「CAM」赤外線ハイパースペクトル顕微鏡「MicrOmega」の4つです。




磁力計「MasMAG」
小惑星の磁場を観測できる装置です。
ドイツのブラウンシュヴァイク工科大学のフラックスゲート磁力計です。装置自体は小惑星の微弱な磁力も感知できるように薄いMLIで覆われているだけですね。
オーロラ観測衛星「テミス」や彗星探査機「ロゼッタ」、金星探査機「ヴィーナスエクスプレス」にも搭載されてるものです。

IGEP-MASCOT Mission overview
(Mascot MAGをご参照下さい)




赤外線ハイパースペクトル顕微鏡「MicrOmega」
複数のバンド(チャネル)を使い分けることにより、太陽系において惑星誕生に関わる、揮発性物質や炭素を含む鉱物を探る事ができます。0.9~3.5umの波長域において、500ものチャネルを持ちます。

到達できなかったロシアの火星探査機「フォボス・グルント」に搭載されたものと同じ観測装置です。
「はやぶさ2」がフォボス・グルントの分も頑張ってくれると嬉しいですね。
またESAが打ち上げを予定している火星探査車「エクソマーズ」にも搭載が予定されています。

MicrOmega: an hyperspectral NIR microscope on board Hayabusa2.
(PDF)




地表面放射計「MARA」
小惑星の複数の場所で表面の温度を計測することができるほか、波長によって着陸地点の鉱物を識別することができます。ビスマス・アンチモン熱電対が72個取り付けられたセンサが6つ搭載されています。

センサは彗星探査機「ロゼッタ」搭載の着陸機フィラエの「MUPUS-TM」と同等品です。
電子機器は水星探査機「ベピ・コロンボ」の水星表面探査機「MPO」の放射計「MERTIS-RAD」と同等品です。

The MASCOT Radiometer MARA for the Hayabusa 2 Mission
(PDF)




光学カメラ「CAM」
1024x1024の解像度を持つCMOSカメラです。視野角は55度で、カラーチャンネルは470、530、640、870nmの(RGB、近赤外)4チャンネルとなっています。4つのLEDが搭載されていて照らす事も可能です。
火星探査車エクソマーズに搭載の「PanCam」と同等品です。光学カメラで周囲の様子を撮影することができます。

A Camera for the MASCOT lander on-board Hayabusa 2
(PDF)




似たような機体として彗星探査機「ロゼッタ」に搭載されている着陸機「フィラエ」がありますが、これが搭載しているAPXSとかガスクロマトグラフとかがMASCOTに積まれていないのは、「はやぶさ2」は地質サンプル自体は持って帰るからって事で、MASCOTは「持ってきたサンプルはどういう状態のところにあったか」という点で、小惑星そのものの観測を行う事に重点を置いているんじゃないかと思います。

また、他の探査機で採用された同じシリーズの観測装置を使う事でキャリブレーションもやりやすく、フィラエのデータとMASCOTのデータとで彗星と小惑星の比較がしやすいはずです。

また観測機器を絞る事で軽量化されていることが、ホッピングによる移動を可能にしている点の一つではないでしょうか。面白い機体ですね。
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コメント

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MASCOT見てきました、大漁旗もありましたよ

通りすがりの宇宙好きです。3月に仕事でJAXAに行って、HAYABUSA2とMASCOTの間の通信解析をしました。HAYABUSA2本体はありませんでしたが、ちょうどドイツからMASCOTの実物が届いたところで、ラッキーなことに開梱するところから見ることができました。
大漁旗、見ましたよ。誇らしげに掲げられています。同じ宇宙ファンとして感動しました。テレビに写っていたのはクリーンルーム手前の制御室(?)で、旗の下にボカシがかかっているのがガラス窓、その向こう側がクリーンルーム(2つあるクリーンルームの古い方だそうです)で、その中で組み立てされているようです。私は作業でこのクリーンルームに終日入りました。

ともにゃん

宇宙開発や原子力が大好きな魔法少女(文系成人男子)です。同人サークル「東方旅客鉄道」「隙間科学研究所」の中の人。絵描いたり同人誌書いたり。たまに女装コスプレイヤー。 人工衛星・宇宙探査機/原子炉・原子力電池/核兵器・軍事(現代兵器)/ゴスロリ女装/自作PC/まどマギ/東方/無線/バイク/鉄道/創作など。日本原子力学会員

88年生まれ
三重県出身 東京都在住