アメリカの小型核弾頭「W30」の開発

その他
04 /11 2015
核出力5キロトンのW30核弾頭は、RIM-8「タロス」艦対空ミサイルや、戦術核爆破資材「TADM」で用いられました。W30はロスアラモス科学研究所(現在のロスアラモス国立研究所)で開発されました。直径が55センチ程度の対空ミサイルに搭載できるよう、小型の設計になっているのが特徴です。

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▲RIM-8「タロス」艦対空ミサイル
中空の高濃縮ウラン合金のピットに周囲に爆縮レンズを配置したインプロージョン型の核爆発装置となっています。爆縮レンズは熱電池を電源とする起爆装置に接続されており、この起爆装置はミサイルが発射されてからブースターが分離され、かつ高い加速度が加わってから一定時間が経過して初めて起爆可能になるよう、安全のための環境検出装置(ESD)が備えられています。

W30は「ジッパー」と呼ばれる外部パルス中性子源をイニシエータとして用いた初めての核弾頭でもあります。核兵器においては爆縮レンズによって核物質を爆縮するだけでなく、そこから核分裂の連鎖反応を開始させる必要があります。核分裂連鎖反応は中性子によって引き起こされるため、その最初の中性子を発生させるためのものがイニシエータなのです。例えるならば、ドミノ倒しで最初のドミノを倒すための装置のようなものです。これは小型の静電加速器のようなもので、重水素イオンをトリチウムのターゲットに衝突させる事で核融合反応を引き起こし、その際に生じる14MeVという高いエネルギーを持つ中性子を利用します。この中性子によって爆縮された高濃縮ウランは超臨界状態となり、核分裂連鎖反応が一気に進んで核爆発を生じさせます。

この超臨界状態は核分裂で生じた即発中性子のみで臨界状態となります。原子力発電で用いられる原子炉においては核分裂で生じた即発中性子の他、核分裂で生まれた核分裂生成物(FP)のうち、数秒から数分の半減期という遅れをもって放出される遅発中性子と呼ばれるものを利用しているため、運転制御における出力の変化はゆっくりとしたものになります。対してこの即発中性子のみによる超臨界状態では一瞬にして核分裂反応が増大し、爆発的な熱エネルギーの放出が生じます。この連鎖反応を数段階経る事で核爆発という現象となるのです。

またW30はブースト型核分裂弾頭と呼ばれる設計になっています。これは純粋に核分裂反応のみを利用するのではなく、重水素とトリチウムの混合ガスを起爆前に弾頭内部に充填しておくことで、核分裂連鎖反応によって生じた強大なエネルギーにより核融合反応を引き起こさせるというものです。この核融合反応で生じた大量の中性子により高濃縮ウランの核分裂反応をより効率的に促進させ、弾頭の威力である核出力を大幅に向上させています。また、この核融合反応そのもので生じる熱エネルギーもあり、これは核出力を数パーセント向上させています。

W30核弾頭は米ネバダ核実験場にて5回の実験が行われました。当時XW30と呼ばれていたこの弾頭は1955年のティーポット作戦において2回、1957年のプラムボブ作戦において3回行われています。


Teapot-Moth.jpg
ティーポット作戦・モス実験
19555年2月22日に実施。外部パルス中性子源を用いた核弾頭の最初の試験でした。それまで行われた核実験のうち最も小さな弾頭でもありました。核融合によるブーストは利用せず、純粋な核分裂のみの実験です。核出力は2キロトン(予測は4キロトン)でした。


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ティーポット作戦・ホーネット実験
1955年3月12日に実施。重水素とトリチウムのガスを充填したピットにより、核融合を用いたブーストを利用する弾頭の実験でした。核出力は4キロトン(予測は10キロトン)でした。


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プラムボブ作戦・フランクリン実験
1957年6月2日に実施。爆縮レンズにPBX9401とPBX9404と呼ばれる高性能爆薬を用いて行われた実験です。2キロトンの核出力が予測されていましたが、不完全核爆発により0.14キロトンの核出力に留まりました。


Plumbob-Franklin Prime
プラムボブ作戦・ストークス実験
1957年8月7日に実施。気球により吊り下げられ、450メートルの高さで起爆されました。核出力は19キロトン(予測は10~20キロトン)でした。


Plumbob-Franklin 1
プラムボブ作戦・フランクリンプライム実験
1957年8月30日に実施。ストークス実験と同様に気球から吊り下げられ、230メートルの高さで起爆されました。これは失敗したフランクリン実験の再実験であり、ウラン235をピットに追加することで行われました。爆縮レンズの高性能爆薬にはPBX9010とPBX9404が用いられました。核出力は4.7キロトン(予測は2キロトン)でした。



W30核弾頭は「タロス」艦対空ミサイルと「TADM」特殊核爆破資材に用いられましたが、上空で炸裂されるタロスには各出力4.7キロトンの弾頭が開発されたのに対し、TADMは地上で用いられるために衝撃波が広がりづらいという問題があり、そのためTADM用には4.7キロトンと19キロトンの核出力を持つW30が開発されました。タロス用、TADM用ともに300個が1959年~1965年にわたって製造され、1979年に退役しました。

W30核弾頭は短距離弾道ミサイルMGM-29に搭載されるW52核弾頭のプライマリとしても利用されました。これはこのプライマリの熱エネルギーによってセカンダリの核融合反応を引き起こし、大きな核出力を得る熱核弾頭(水素爆弾)であり、200キロトンの核出力を持ちました。このプライマリとして利用されたW30核弾頭は「ボア」プライマリとも呼ばれます。

参考:Talos Missile W-30 Nuclear Warhead Development
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ともにゃん

宇宙開発や原子力が大好きな魔法少女(文系成人男子)です。同人サークル「東方旅客鉄道」「隙間科学研究所」の中の人。絵描いたり同人誌書いたり。たまに女装コスプレイヤー。 人工衛星・宇宙探査機/原子炉・原子力電池/核兵器・軍事(現代兵器)/ゴスロリ女装/自作PC/まどマギ/東方/無線/バイク/鉄道/創作など。日本原子力学会員

88年生まれ
三重県出身 東京都在住