今後どうなる?高速増殖炉と核燃料サイクル

原子力
09 /27 2016
さてさて「もんじゅ」が今後どうなるのか、廃炉されちゃうのか維持されるのかニュースでも話題ですね。原子力学会では「資源確保」の点で「もんじゅ」の維持を、という声がありますしそれも将来的には重要ですが、余剰プルトニウムや廃棄物の低減という核燃料サイクルでの別の立ち位置も検討されれば良いかなーと思ったりします。「もんじゅ」の当初のコンセプトは「プルトニウムを増やして資源の確保」だったわけです。オイルショックの記憶も新しい70年代の頃のお話ですし。

でもその「増殖」というコンセプトを中心にしすぎると…増殖以外の用途でも使えるハズの高速炉の開発が、今みたいに「プルトニウム余ってるよ」って状況になった時に「まだ開発しなくて良くない?」って停滞してしまうかもしれないので、それ以外の用途にも使える「汎用性」や「多機能性」をアピールできたら良いなと思うのです☆

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(Credit:CEA)

こちらが日本がフランスと共同開発を行う次世代の高速炉「アストリッド」です。最近はニュースでも名前が。この子は燃料の増殖を目的とせず、放射性廃棄物の低減や、より安全性の高いナトリウム冷却炉の設計を目指した新しいコンセプトの原子炉です(`-ω-´)✧

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北朝鮮の核実験の実態やいかに!? ~プルトニウム生産能力と「ブースト原爆」の脅威~

核兵器
09 /10 2016

先日北朝鮮がやっちゃった核実験、核出力10キロトンということで弾道ミサイル開発に加えてこちらも確実に実用化に近づいておりますねェ(´ºωº`) 実は北朝鮮は今年6月の段階で核兵器用プルトニウムの生産を再開してたっぽい事がIAEAから発表されてました(゜д゜)


熱出力5000キロワットの黒鉛炉の稼働と再処理施設の動きから作られたというプルトニウムが今回使われたのかもしれません。北朝鮮がどれくらい核兵器に適した高純度のプルトニウム239を、再処理で抽出できるかはわかんないんですけど、今年1月の「水爆実験」と称した核実験が気になります。

ブースト原爆の可能性


水爆程ではないにしろ、同じように核融合を利用して中性子で原爆の出力を増強させるという「ブースト原爆」の実験だったとしたら…

ブースト原爆は、プルトニウムの核分裂の熱エネルギーで重水素とトリチウムを核融合させ、その時出る中性子でプルトニウムをさらに核分裂させて核兵器としてのパワーを向上してます。
つまり普通は十分な核爆発に至れないような多少質の悪いプルトニウムでも核爆発できるレベルまでもっていけるかも?という。トリチウムをリチウムから生産するための設備が必要になったり、ブースト原爆の開発も大変です。
リチウムに中性子を照射する原子炉と、照射した後にそこからトリチウムだけを単体で取り出す必要があるのです。あと質の悪いプルトニウムは同位体比の関係で放射線量と発熱量が多くなる場合があって、組み立て時の被曝とか、発熱の機器への影響があったり。
普通に原爆を作るより技術が必要になる場合もあるのです。核兵器の拡散防止を担保してるのは「保障措置」というウランやプルトニウムみたいな核分裂性物質の規制や管理なのです。

それに比べて核融合燃料の重水素やトリチウムは入手は遥かに容易で、重水素なんてそこら辺の海水から分離できます。トリチウムは原子炉があれば副産品として作れますし。

核兵器の拡散は防げるか?


核兵器の拡散防止のため、IAEAではプルトニウムの質の良し悪しは特に関係なく「プルトニウム238が80パーセント以上のもの以外」すべて保障措置の対象です。ちなみにプルトニウム238の割合が80パーセント以上のプルトニウムって何かというと、宇宙探査機用の原子力電池に利用される熱源です。
プルトニウム238は他のプルトニウム同位体と比較して発熱量と、中性子線量が桁違いに大きく、プルトニウム238は最も核兵器に使用できないプルトニウム同位体なのです。原子力発電所の核燃料にプルトニウム238を混ぜることで、その核燃料が核兵器の原料に転用されにくくする研究もあります。
なので核兵器に適したプルトニウム239が93パーセント以上という、いわゆる「兵器級プルトニウム」じゃなくても核兵器に転用できる可能性が(将来含めて)ありえるかもって事かもしれません。この重水素とトリチウムの核融合による「ブースト」技術などがあれば、必ずしも兵器級と言われる程質の良いプルトニウムでなくても、核兵器に転用できる可能性があるということです。
もちろん高品質な兵器級プルトニウムを作れるに越したことはありませんが、比較的入手しやすい技術で、核兵器には「兵器級プルトニウムが必要」という条件を緩和できるかもしれないのです。その点北朝鮮がどれくらい技術やノウハウがあるのかは未知数ですが、脅威の度合いは時間と共に大きくなっているのです。
つまり北朝鮮に兵器級プルトニウムを作る能力があればもちろん脅威ですし、兵器級プルトニウム程質の良いプルトニウムを作れなくても、ブースト原爆などの技術が確立されてればそれも脅威というわけなのです。

放射性廃棄物を安全に処理する「ガラス固化」の技術

その他
09 /10 2016
原子力発電における使用済み核燃料の再処理(リサイクル)では、使い終わった核燃料から燃料としてまだ利用できるウランやプルトニウムを、それ以外の高レベル放射性廃棄物と分離することができます。

使い終わった核燃料をそのまま捨ててしまう場合よりも、放射性廃棄物を単体で取り出すことができるので、放射性廃棄物の量を減らすことができるのです。

そもそも高レベル放射性廃棄物とは何でしょうか?原子炉ではウランやプルトニウムが外からの中性子で核分裂を起こしていますが、この核分裂で割れて出来た核分裂生成物(FP)や、ウランやプルトニウムに中性子が当たったのに核分裂を起こさず、そのまま別の物質になってしまったマイナーアクチノイド(MA)というものが核燃料を使えば使うほど中にどんどんたまってくるのです。

これらの物質は不安定で、半減期が短いものが多く、放射能は結構はやく減衰するのですが、一部には非常に長い半減期を持ち、また発熱性のものも多いことから取り扱いが面倒という特徴があります。

こうした放射性廃棄物を核燃料と分離して取り出すのが再処理なのです。再処理によって放射性廃棄物だけを取り出せるので、ゴミとしての「かさ」は減らすことができるのですが、そのぶん「濃く」なっているのでその放射能は極めて強いのです。

で、その取り出された高レベル放射性廃棄物はどうなるのでしょうか?

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実はこんな風にガラスと混ぜて固体にしてしまうのです。再処理によって取り出された高レベル放射性廃棄物は液体だったりするのですが、液体の場合漏れて何処かに流れて行ってしまう可能性があるなどして非常に危険です。なのでこうしてガラスで固めてしまうのです。

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網目のような構造になっているガラスに、放射性物質を絡め取っているようなものですので、割れても即座に放出されたりとかはしません╰( º∀º )╯ガラスは非常に安定性の高い物質で、周りに水があったとしても非常に溶け出しにくくなっています。たとえばガラスのコップに飲み物を入れて飲んでも飲み物にガラスが溶け出していったりはしないですよね。

ただ、100パーセント溶け出さないかというとそうでもなく、水流などに晒された場合に削り取られてしまったり、ゆっくり滲みだしてしまう可能性もあります。なのでこのガラス固化体をステンレスや粘土といったもので周りを固めまくった上で、地震などの影響を受けにくい地下300メートル付近の岩盤に埋めるのです。

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この高レベル放射性廃棄物のガラス固化処理には、ガラス成分と高レベル放射性廃棄物を混ぜて、溶かしてから固めるため、金属製の容器をマイクロ波で加熱するAVM法(メタリックメルター)と、セラミック製の容器を直接通電で加熱するLFCM法(セラミックメルター)の2種類が主に利用されてますヾ(  ˙³˙  )ノ゙

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こちらの写真はフランス原子力庁による、AVM方式でのガラス固化処理の様子です。

日本の六ケ所村の核燃料再処理施設ではLFCM法が用いられています。一時期この方式で、核分裂生成物(FP)に含まれる白金族が温度の低下によって析出されてしまい、ガラス固化体がうまく作れないという事がありました。核分裂生成物(FP)には様々な物質が含まれているため、この中には高温でも溶けにくい白金族などの物質もあります。なのでちょっと温度が下がった場所があったりすると、そこで溶けていた白金族が固まって出てきてしまったりするのです。そのため、溶融炉の温度管理を精密に行えるように回収することで解決されました。

熱電子放射体「六ホウ化ランタン(LaB6)」の特徴と応用

その他
09 /08 2016
熱電子、とはあまり聞き慣れない言葉かもしれません。しかし実は割と身近なものでもあります。というのも天上にある蛍光灯がまさに熱電子を利用している装置なのです。

蛍光灯のフィラメントにはタングステンなどの材料が使用されています。タングステンは小さいエネルギーで熱電子を外部に放出しやすいという特徴があります。蛍光灯ではタングステンから放出された熱電子がガラス管内部の水銀原子に衝突し、励起された(エネルギーを得た)水銀原子からは紫外線が放出されます。この紫外線が蛍光体によって可視光線に変換され、私たちの部屋を照らしてくれているわけです。

そしてタングステンのように小さいエネルギーで電子を放出しやすい(「仕事関数」が小さい)材料として「六ホウ化ランタン」と呼ばれるものがあります。「ランタン・ヘキサボライド」、「LaB6(ラブシックス)」とも表記されます。

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このキレイな赤紫色の物質がLaB6です。

タングステンよりも熱電子を放出しやすいというだけでなく、極めて硬く、融点も非常に高いという優れた性質を持っています。長い寿命を実現しやすいことから、様々な分野で利用されています。



熱電子放射体としてのLaB6の用途は、「電子顕微鏡」、「熱電子発電」、「宇宙機の電気推進システムや、粒子加速器用のイオン源」など様々な用途が存在しています。

・電子顕微鏡

タングステンよりも熱電子を放出しやすいので、電子を観察に利用する電子顕微鏡においてはその空間分解能(どれだけ細かく見れるか)を向上させることができます。電子顕微鏡において電子を発生させる電子銃と呼ばれる機器に用いられます。


・熱電子発電

あまり聞き慣れない方式の発電システムですが、宇宙用原子炉などにおいて、原子炉の熱エネルギーを電気エネルギーに変換する技術です。熱電子放射体であるエミッター(陽極側)を原子炉熱で加熱し、そこから放出される電子をコレクター(陰極側)で受け取る事で電力を発生させるというものです。より効率よく熱を電気に変換できるよう、熱電子を放出しやすいLaB6の使用が検討されています。


・イオン源

宇宙探査機に搭載されるエンジンには、長距離を航行するため燃費の良いエンジンが求められます。その一つが小惑星探査機「はやぶさ」にも搭載されたイオンエンジンなどの電気推進システムです。これはキセノンなどのガスをイオン源で電離させプラズマを作り、高電圧の電場で加速させて放出させることで宇宙探査機を飛ばすというものです。

プラズマを作るためにはタングステンやLaB6を使った電極から電子を放出させ、推進剤ガスにぶつけて生成する「直流放電式」という方法と、マイクロ波で電子を加速して推進剤ガスにぶつける「マイクロ波放電式」の2種類があります。

「はやぶさ」に搭載されたイオンエンジン「μ10」は「マイクロ波放電式」ですが、アメリカNASAの「ディープスペース1」などは「直流放電式」が利用されています。直流放電式を用いたイオンエンジンにおいても、性能も高く、寿命も長いLaB6が重宝されます。

ちなみにマイクロ波放電式は直流放電式と比較して電極が無いので「電極をゆっくり予備加熱をする必要がない」「電極の損耗による寿命がない」などの特徴があります。

イオンエンジンだけでなく、ホールスラスタやMPDといった別の電気推進システムでも用いられる、放電用のホローカソードと呼ばれる部品にもLaB6の使用は検討されています。

こうしたイオン源は宇宙探査機だけではなく、地上の大型の粒子加速器にも使用されていたりします。


LaB6は普段聞き慣れない物質ではありますが、こうして様々な特殊な用途で活躍しているのです!

「マヨラナ粒子」を探せ!KEKで見た二重ベータ崩壊実験

原子力
09 /08 2016
ニュートリノは実は粒子と反粒子の区別がつかないという「マヨラナ粒子」なんじゃないか?ということを検証するための「ニュートリノを放出しない二重ベータ崩壊」の測定実験でした٩( 'ω' )و❤

電子を放射線として放り捨てるタイプの放射性物質を「ベータ崩壊核種」って言うんですけど、この時のエネルギーは電子と、電子と一緒に出てくるニュートリノにも持ってかれます。ベータ崩壊が起きるときには、原子核の中の中性子が陽子に変わり、その時に電子とニュートリノが放出されるのです。
そしてこのベータ崩壊が2回ぶん同時に起きる現象は「二重ベータ崩壊」と呼ばれます。でももし、二重ベータ崩壊で出た2つのニュートリノ同士がその場で打ち消し合って消えたとしたら…ベータ崩壊で生じたエネルギーは全て原子核から放出される電子が持ってくことになります。何故ニュートリノ同士がぶつかるとニュートリノはどっちも消えてしまうのでしょうか?
二重ベータ崩壊 
二重ベータ崩壊の説明(Credit:KEK)
https://www2.kek.jp/ja/newskek/2004/sepoct/doublebeta1.html
粒子は逆の性質を持つ反粒子とぶつかるとお互いが打ち消し合って消滅します。「対消滅」という現象なのですが、例えば電子(粒子)と陽電子(反粒子)がぶつかると消えます。同じようにニュートリノと反ニュートリノもぶつかると消えるはずなんですが、その2つは実は区別の無い、同じモノなんじゃね!?っていう説があるそうです!✨

ニュートリノに反粒子が存在しない、というよりニュートリノの反粒子である反ニュートリノは、ニュートリノ自身である可能性があるのです。こうした両刀な粒子を「マヨラナ粒子」と呼び、粒子と反粒子が別個に存在する「ディラック粒子」とは区別されます。
ディラック粒子とマヨラナ粒子 

ニュートリノがマヨラナ粒子であった場合、ある原子核が二重ベータ崩壊を起こした時に発生した2つのニュートリノは即座に打ち消し合ってしまい、本来電子とニュートリノが同時に出てくるハズなのに、電子しか出てこないという「ニュートリノレス二重ベータ崩壊(0νββ)」があるんじゃないか、ということです。
二重ベータ崩壊を起こす核種としてはモリブデン100とかウラン238とかが該当するそうですがその確率は低く滅多に起きないそうです( °ロ° ) ちなみに二重ベータ崩壊では2つの中性子が陽子に変わるので原子番号が2つ上がり、ウラン238の場合はプルトニウム238になります。
さらに発生する二重ベータ崩壊が全て「ニュートリノレス」なのではなく、ニュートリノを出してくる二重ベータ崩壊も発生します。むしろこちらの方の確率が大きいとされ、中々「ニュートリノレス二重ベータ崩壊」を観測するのは難しいと言われています。
高エネルギー加速器研究機構(KEK)が行っているこの「ニュートリノレス二重ベータ崩壊」の測定実験として「DCBA実験」が行われています。これはモリブデン100を使い、ヘリウムと二酸化炭素のガスで満たされたチェンバー内で放出されたベータ線を超電導磁石による磁場で螺旋運動させ、その軌道にそってベータ線によってイオン化されたガスのイオンと電子が、装置内の電極まで移動していく時間を測定するというものです。
放射性物質の崩壊をひたすら見続けるこの装置、原子核や素粒子のの面白い性質が解明されていくのが楽しみですね(∩´∀`)∩

ともにゃん

宇宙開発や原子力が大好きな魔法少女(文系成人男子)です。同人サークル「東方旅客鉄道」「隙間科学研究所」の中の人。絵描いたり同人誌書いたり。たまに女装コスプレイヤー。 人工衛星・宇宙探査機/原子炉・原子力電池/核兵器・軍事(現代兵器)/ゴスロリ女装/自作PC/まどマギ/東方/無線/バイク/鉄道/創作など。日本原子力学会員

88年生まれ
三重県出身 東京都在住

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